約 32,352 件
https://w.atwiki.jp/churuyakofu/pages/179.html
※慧音の努力により人里が人外に寛容になったのは霖之助が店を構えた後という設定です。 ※霖之助が修行しているのは香霖堂を立てる数年前からであり、店の人間以外は彼が半妖とは知りません。 以上の設定を踏まえてご覧ください。 「……糸も布も残り少ないわね……また買いに行かないと……」 七色の人形遣い、アリス=マーガトロイドの艶やかな口から漏れる声。 本来ならば同性であっても聞き惚れるような美しく儚いその声も、倦怠の色が混ざっては魅力半減である。 これは、森近霖之助が霧雨の店で修行していたころのお話。 魔理沙や霊夢が、まだ無邪気に遊んでいたころのお話。 【彼が気付かせてくれたもの】 自分の生活に問題などない。 アリス=マーガトロイドはそう自覚しているつもりだ。 目標である完全自立人形の完成を目指して、研究と研鑽を重ねる日々。 そのことに全く問題はない……が、人形を作る以上、材料をどこかで手に入れる必要がある。 できれば家に篭っていたいのだが、自分で布や糸まで作っていては時間の無駄だし、そこまでの技術もない。 そういった理由で、たまに人里へ買出しに行くことだけは楽しいこととは言えなかった。 傍らに人形を浮かべ、人里で必要なものを調達するアリス。 すでに何度も訪れているため、商談はスムーズに進んでいく。 そう、商談"は"。 「……」 道を歩くとき、商品を受け取るとき、嫌が応にも感じる。 道行く人間たちの、店員たちの冷たい視線。ひそひそとささやく声。 歓迎されていないことを承知で来る自分も自分だが、いい加減同じことばかりして飽きないのだろうか。 刺さる視線に負けない冷ややかな心で、アリスは淡々と材料を買い込んでいく。 ……今度はもっと人形をつれてきて、大量に買い込むとしよう。 別に人間にどう思われようが知ったことではないが、好き好んで味わうような雰囲気でもない。 実際の疲労以上に疲れを感じながら、アリスは家に帰っていった。 ちなみに材料を買う資金は、人形を里の店に卸すことで調達している。 無論、製作者がアリスということは伏せてあり、受け渡しは人の目のないところで行われる。 店の人間も、里の人間である以上アリスを快く思ってはいないが、実際人形の出来が良い上に売れ行きも上々。 面構えだけはにこやかなその店員をくだらないと思いつつ、利害の一致によりアリスの売買は続いている。 次に里を訪れるのは何ヵ月後か。計算している自分が面白くない。 まあ、考えてもその時が先に伸びるわけではないか。 そう自分に言い聞かせ、アリスは人形作りに没頭していった。 祭りの日。 アリスは道端の一角で人形劇を披露する。 まるで生きているような動きに加え、通常ではありえないほど大勢の登場人物。 しかし、文字通り魔法のようなその光景に目を向ける人間はほとんどいない。 まれに目を輝かせる子供がいるにはいるが、そばの大人が諫めるためにすぐどこかへ行ってしまう。 曰く、あれをやっているのは人間ではない。 曰く、あれを見ていたら魂をとられる。 それでなくても、なぜお前なんぞがここにいる、という視線が常について回る。 めでたい祭りに紛れ込んだ異物に一瞬敵意を向け、直後まるでアリスの存在など見えない体を装う人間たち。 ふん、と内心でアリスは鼻を鳴らす。 別に馴れ合いにきているわけじゃない。 一人で家に篭って人形を操るのと、他人の目があるところで人形を操るのとはでやはりどうしても感覚が違う。 だから、これはあくまで自分のため。別にこれをきっかけに人間に近寄ろうとは思わない。 むしろ今はそれでいい。いつか自分を白い目で見ている人間たちが、目を離せなくなるような劇を演じてみせる。 そんなことが幾度か続いたある日。 いい加減いつもの店に行くのが面倒になったアリスは、違う店を探して歩いていた。 すると、一軒の店が目に入る。 『霧雨店』 どうやら生活用品などを売る雑貨屋のようだ。 ちょうどいい、人間の店などどこでも同じだし、ここで買い物を済ませて帰るとしよう。 アリスが店に入ると、眼鏡をかけた銀髪の店員が話しかけてきた。 「いらっしゃいませ。 おや、はじめてのお客さんですね。何をお探しで?」 「布と糸。できれば丈夫なものを」 にこやかな店員とは違い、アリスのほうに愛想良くする理由などない。 そっけなく用件を伝えると、店員は少々お待ちを……と言って引っ込んでいった。 「これでいかがでしょう?」 「……。いただくわ」 品質を確かめ、満足するアリス。 普段使っている店よりは上等なものを扱っているようだ。 「それでは御代を……おや、その人形は……」 「……この子がなにか?」 気付かれたか。顔には出さないが内心で舌打ちするアリス。 どうやら自分の悪名は思っていたより人里に広まっているらしい。 どうせこの店員も手のひらを返したように迷惑そうな態度をとるのだろう。 浮かんでいた人形を、念のために腰元に下げて入店したが、徒労に終わったようだ。 また次の店でも探すかな、と思っていたアリスだったが、 「もしかして、あなたがアリス=マーガトロイドさんですか? いやあ、お会いできて光栄です。 ああ、申し送れましたが、僕は森近霖之助。この店で商売人の修行をしているものです。 それにしても素晴らしい人形だ。お一人で作られているというのは本当ですか? できれば手にとってじっくりと見せていただきたいのですが。 ああ、それに……」 森近霖之助と名乗る店員は、鮮やかに予想を裏切ってくれた。 「僕がなぜアリスさんのことを存じているかというと、気晴らしに向かった人形屋で作品を拝見しまして。 あまりに精巧かつ繊細にできているものですから、そこの店員に製作者について聞いてみたんです。 ところが、その店員が頑として口を割らない。 これは何かあると思って絶対他言しないことを約束した上、袖の下まで使って聞き出してしまいました。 道具はどのようなものを? やはり魔法を使って? それとも純然たる技術の結晶ですか?」 ……何だこいつは。 今の言い方なら自分が魔法使いだということくらい知っているのだろうに。 まあいい。拒絶されてはいないようだし。 むしろ問題はこの口か。 「あの、早く作業に戻りたいのでお勘定を……」 「ああ、これは失礼。ついつい話に夢中になってしまいました」 一応人の話を聞く余裕はあったらしいその店員に代金を支払い、店を出るアリス。 「今度は時間のあるときにいらしてください。是非人形の話を聞かせていただきたい。」 「……そうですね。考えておきます」 前向きな返答に喜ぶ霖之助。 変なやつ。 そう思うアリスだが、不思議と悪い気はしなかった。 人形を評価してもらったからだろうと結論付け、アリスは自宅へと帰っていった。 それから、アリスは霧雨店で買い物をするようになった。 人形の材料だけでなく生活用品まで揃っているため、何件も回る必要がないからだ。 何より、この店の店員は自分を嫌がっている様子がない。 特に森近霖之助と名乗った若い男。 会うたび会うたび人形を褒めちぎり、製作のことについて質問してくる。 挙句の果てに、人形屋の店員は魔法使いが作った人形だからといってあれほどの作品の手入れを嫌がっているが、 そんなことで品物の扱いを決めるとは全く商売人失格だなどと、アリスの味方をするような言動まで平然と吐く。 一度彼の不在時に店を訪れた事もあったが、次に来店したときには『勿体無いことをした』を10秒に1回は言う始末である。 気がつけば、アリスは人里での買い物が重荷ではなくなっていた。 そうなると1度に買い込む量も減り、月に1度ほどの間隔で定期的に店を訪れるようになる。 霖之助と話し込むうち、知らず知らずのうちに笑顔になることもあった。 それを見ていた別の客は、 「いやあ、あの氷みたいに無表情な魔法使いでも、あんなふうに笑うことがあるんですなあ」 と、驚きを隠せず、会う人会う人にその事を語ってまわったと言う。 ようやく、アリスにとって本当に充実した日々が訪れた。 唯一の心掛かりがなくなり、心置きなく人形作りに集中できる。 出来上がった人形を見せると、霖之助をはじめ、霧雨店の面々は手放しで賞賛してくれた。 中でもその店の子供である小さな少女は、毎回目を丸くして人形に見入り、別れ際には何度もいつ来るのかと聞いてくる。 自分を正しく評価してくれる存在がいるだけで、こうも違ってくるものか。 アリスの頑なだった心は、徐々に溶け始めていた。 祭りでの人形劇も、気がつけば足を止めてみている人間がちらほら出始めた。 見ているのは、子供や面白いものに飢えた若者がほとんどだ。 もしかしたら、霖之助が霧雨店を訪れる客に自分のことを語って聞かせたからかもしれない。 そう思うと、なんだか心が温かくなるアリスだった。 優しい微笑を浮かべるアリスが水面下の噂となって、観客にやや男たちが増えもしたが。 しかし、そんな生活も唐突に終わりを告げる。 「出て……いった?」 「ああ、いつか自分の店を持ちたいって言ってたからなあ。 直接あんたに告げられないのが残念だって言ってたぜ。 たしかあいつの店は……あ、ちょっと!」 「っ!」 最期まで話を聞くことができず、アリスは自宅へ向かって飛び出していた。 もう会えなくなったことも、そのことについて何も言ってもらえなかったことも、何もかもが辛かった。 自宅の椅子に座り込み、ぼうっと考えこむアリス。 なぜ自分はここまで取り乱しているのだろうか。 別に彼がいなくなっただけで、かつての生活に戻るだけではないか。 大丈夫。今までそうして生きてきたんだから。 言い聞かせることで胸の痛みは小さくなる。 小さくなりはしても、消えてはくれなかった。 それは、アリスが他者と触れ合うことの楽しさに気付いてしまったから。 気付かせてくれた彼が、なんの断りもなく一方的にその触れ合いを絶ってしまったから。 もう、かつてのように生きていくことはできなかった。 ちくちくちく。 布に糸を通す音が聞こえる。 が、 「……集中できない……」 音の発生源ことアリスは、この1ヶ月というもの人形作りに身が入っていなかった。 人形を作ることで霖之助との繋がりが絶たれたショックを振り切ろうとするのだが、人形を作るということはその完成形をイメージするということ。 イメージするたび浮かんでくるのだ。完成した人形を褒め称える霖之助の姿が。 どこに居るのかわからない以上、彼が褒めてくれることなどありえないというのに。 結局、彼のことを忘れるための人形作りで、自分にとって彼の存在がどれほど大きかったか痛感する破目になる。 心に刺さった針は、いまだに抜けてくれない。 「はぁ……気晴らしに外を歩いてこようかな……」 どの道このまま家に居ても何も変わらない。家に居て何とかなるならこの1ヶ月で何とかなっている。 アリスは珍しく散歩に出ることにした。 しばらく森の中を歩くアリス。 鳥の囀り、木々の葉からこぼれる日の光、清清しい空気。 心の痛みがさらに小さくなっていくのがわかる。小さくなった分鋭くもなったが。 だがまあ、たまにはこういうのも悪くない。 新しい楽しみを見つけた喜びを味わうアリス。 と、ここで1ヶ月前にはなかった物に気がついた。 「なんて読むんだろう……こう……??……どう?」 名前からしてどうやら何かしらの店らしい。 こんな森の入り口に店を立てるなど、どんな変わり者なのだろうか? ……まあどうせ暇だし、冷やかすのもいいか。 なにやら興味を引かれたアリスは、香霖堂と看板のかかった店の戸を開けた。 「いらっしゃい……おや、アリスじゃないか。 折角開店したのに1ヶ月も来ないからどうしたのかと思っていたよ」 「……え、なにこれ」 店の中にいたのは、もう会えないと思っていた男、森近霖之助だった。 店に入ってくるなり疑問の声を上げ、ぽかんとしているアリスを見て、随分表情豊かになったなあなどと考える霖之助。 アリスは2~3回ほど目をパチパチさせると、 「なんで? どうしてこんなところに霖之助さんが?」 と聞いてきた。 霖之助はそれを聞いて、どうやら1ヶ月も訪れなかったのは愛想をつかされたのではないらしい、と内心安堵する。 「ふむ、霧雨の親父さんに聞いていなかったのかい? しっかり伝えてくれるように何度も念を押したんだけどなあ」 「……そういえば最後まで聞かずに出ていったんだったっけ」 「ん? 何か言ったかい?」 「え、う、ううん、なんでもないわ」 「そうかい? まあ折角だし、僕が店を持つに至った経緯を説明しておこうか。 一応これでも、僕は商売人の端くれだ。 いつかは自分の店を持つ。そんな目標を持ってはや幾歳。 霧雨店で修行を積んではいたが、なかなかその機会に恵まれなかった。いや、正確には自分の持ちたい店がわからなか ったんだ。 そもそも僕が店を持ちたいのは、僕の『道具の名前と用途がわかる程度の能力』を生かしたいがため。 ならば普通の店では意味がない。 そんな時、外の世界の道具が流れ着くという無縁塚のことを思い出した。 試しに無縁塚に行ってみればあるわあるわ。見たこともない道具でいっぱいだ! これはこの道具たちを扱えという天からのお達しに違いない。 そう思った僕は、人も妖怪も来れる場所、無縁塚にも近いこの場所で外の商品を扱う、それが僕の使命だと悟ったのさ!」 やたらテンションが高く、なにやら芝居がかった話し方をする霖之助。 もう会えない……とか考えていた自分が情けないやら恥ずかしいやらで、一気に力が抜けるアリス。 「はあ……一体この1ヶ月は何だったのかしら……。まあ、いいか……」 そんなアリスの言葉は当然のように聞いていない霖之助は、ここで常連を1人作っておこうと話しかける。 「そうそう、一応普通生活用品なんかも取り扱っているから、良かったら糸や布などひいきにしてもらえるとありがたいんだ が」 こいつこっちの様子はお構いなしか、と半眼で睨みつつ、アリスはここに来てから抱いていた疑問をぶつける。 「……ええ、まあそれは構わないわよ。人里に下りるより楽だし。 それより、前とかなり話し方が変わってるのはどういうことかしら?」 「ああ、霧雨店では、僕は修行の身だったからね。 お客さんへの対応は霧雨式でやっていたんだ。 しかしここは僕の店だ。よって僕は僕の思うがままに応対させてもらう」 「お客さんとして言わせてもらえば、品揃えが同じでも店員の態度がいい店を選びたいものよ。 と言いたいところだけど……この店と競争する店なんかないわよね……」 「まあそういうわけだ。これからもよろしく頼むよ」 「ああ、それともう1つ。 ここがいくら入り口と言っても魔法の森よ。 人間のあなたにはちょっと危険すぎない?おまけに無縁塚にまで行ってるんでしょ?」 心配してくれるアリスを見て、この子も本当に変わったなあ、と思いつつ霖之助は答える。 おそらく出会ったときのアリスなら、例え目の前で襲われていても素通りだったろうに。 「そう言えば君には言ってなかったかな。 僕は半分妖怪だから、妖怪に襲われることはめったにないよ」 「……ちょっと、何でそんな重大事項教えてくれなかったのよ? それとも霧雨店の人たちに知られたくなかったとか?」 「いや、彼らは皆僕が半妖だということを知っているよ」 「……あ、そう……」 随分懐の深い人間もいたものだ。 それなら魔法使いの自分を嫌がる様子がないのも当然か。 しかし自分は彼のことを何も知らないのだな、といまさらながらに実感するアリス。 まあ自分から人付き合いを遠ざけていたのだ。自業自得というものか。 そんな自分を反省しつつ、アリスは右手を差し出した。 「それじゃあ、今後いろいろとひいきにさせてもらうわ。よろしくね」 「ああ、こちらこそ」 そういえば誰かと握手するなんて初めてかもしれないな、とアリスは思う。 そして、かつての自分がどれだけ勿体無いことをしていたのかようやく理解した。 人と触れ合うことはこんなにも楽しいのだ。 他人に評価される楽しみも、別離の悲しみも、再会の喜びも味わった。 その感情の起伏こそが、生きているということをまざまざと感じさせてくれる。 これからはもっと積極的に他人とかかわっていこう。 そう決意するアリスの前途は、これまで以上に輝いていた。 後日談へ
https://w.atwiki.jp/churuyakofu/pages/284.html
境界が曖昧になるとは職務怠慢である。 日々つらつらとレスを重ねる霖之助スレであるが、時たま異次元から誤って書き込まれたようなレスがつくことがある。 このような現象は一般的に誤爆と呼ばれるが、霖之助スレでは基本的に境界を操る妖怪である八雲紫の職務怠慢であるとされる。 このような現象が起きた際はあまり気にしないことが得策である。 くれぐれも全年齢対象スレに相応しくない書き込みが異次元から為されることがないよう八雲紫はオールタイムで職務に当たるべきである。 たまに裏と表の区別がつかないのが悪い
https://w.atwiki.jp/churuyakofu/pages/226.html
前の話へ 次の話へ あらすじ 無縁塚で拾ったブルマのせいでギクシャクした霖之助と美鈴。 わだかまりが解消され、徐々に心惹かれあうようになる。 そんな時、美鈴はかつて自らが立てた誓いを思い出し、霖之助と距離を置く。 今日は美鈴にとって定期休暇の日。 休みともなれば朝早くから日が暮れるまで香霖堂に入り浸っていた美鈴だったが、今日は自室に閉じこもって出てこない。 いや、前回香霖堂から帰ってきてから今日で3週間、一度も香霖堂に足を運んだことはない。 門番の仕事をしているときも、なにやら沈んだ表情を浮かべてばかりだ。 そんな美鈴を見かねた咲夜がレミリアに相談したところ、 「あの店主に愛想でもつかしたんじゃないの? 大丈夫よ。あの子ならすぐ元気になるでしょ。 でもそうねぇ、半端な気持ちで仕事されてもなんだし、何日か休みをあげましょうか。 丸2~3日自分と向き合えば、気持ちに区切りがつくでしょう」 と、美鈴を気遣う言葉が出てきた。その言葉と、自らの意見を伝えに、美鈴の部屋へ赴く咲夜。 とにかく、美鈴に伝えよう。彼女が何かにつまづいたとき、倒れぬように支える者がそばにいることを。 カーテンを締め切った、薄暗い部屋の中。 美鈴は、この3週間何度も反芻していた自分の半生を、今再び思い浮かべていた。 レミリアに出会う前の美鈴は、今の美鈴からは想像もつかないほど荒んでいた。 物心ついたころには一人ぼっちで、親の顔など知らずに育った。 だから、自分が妖怪であることなど知らず、人の中に混じって生活していた時期もあった。 きっかけは手を差し伸べてくれた人間がいたこと。 ――良かったら一緒に暮らさないか―― それから何年かは幸せに暮らすことができた。 しかし、美鈴が妖怪である以上、徐々に寿命の違いという問題が顕在化する。 当時は人と妖怪が、今よりずっと険悪な時代だった。 周りの人間は、いつまで経っても年をとらぬ美鈴に冷たい視線をむける様になり、ついには武器を手にとって追い出そうとする。 何より美鈴を打ちのめしたのは、そんな人間たちの中に、かつて自分に手を差し伸べてくれた人の姿を見つけてしまったこと。 気付いたときには、痛む心だけを抱えて逃げ出していた。 そうして各地を転々としたが、本当の意味で受け入れられたことなど一度もなかった。 見た目は人間と変わらないせいか、親切にしてくれる人間もいるにはいたが、そんな人間達も美鈴が妖怪だと知ると手のひらを返したように態度を変えた。 見た目が人間と変わらないせいか、知能の低い妖怪たちには何度も襲い掛かられ、危うく食べられかけたことなど数え切れなかった。 ついには何も信じられなくなって、目に写るもの全てに襲い掛かるようになった。 人は殺して食い散らかし、妖怪は痛めつけた上で、気分次第で生かし、殺す。 自分から近寄って拒絶される恐怖に耐えられなくて、それを誤魔化すために狂気で心に蓋をした。 もし、物心がつくときまで親がそばにいれば。 もし、妖怪でも構わないと言ってくれる人間に出会っていれば。 もし、美鈴の事情を理解できるくらいの知能を持った、親切な妖怪と出会っていれば。 ほんの些細なきっかけさえあれば、本当は優しいこの少女が、畏怖の対象になどならなかったはずなのに。 そうして美鈴はレミリアに出会う。 実力の差を感じながら、むしろ死を望むほどの自棄と共に喧嘩を売り、叩きのめされた。 こんな人生をやっと終えることができる。だから早く殺せと思ったが、 「その目を変えてみたくなった。私に仕えなさい」 勝者であることを盾に、まだ生かされることになる。 仕え始めたころは、寝首をかくか、逃げ出すことしか考えていなかった。 しかし、辛辣な言葉と我侭な態度に隠された、わかりにくいが確かな優しさを感じ、また自分に屈託なく接するパチュリーや小悪魔、メイド妖精たちの姿に、徐々に心のとげが取れていく。 いつしか、生来の自分を取り戻した美鈴は、一つの誓いを立てる。 これからの生涯全てをかけて恩を返すと。 そして、その思いを風化させぬため、敬愛する主に面と向かって伝えたのだ。 それを聞いたレミリアは、とても満足そうに笑っていた。 なぜ、忘れてしまったのか。 今自分がこうしていられるのはレミリアのおかげだというのに。 あそこでレミリアに救い上げてもらわねば、生きる喜びも、暖かい他者との触れあいも忘れたまま、咲夜という尊敬する人に会うこともなく死んでいたというのに。 そんな自分に嫌気がさす。 だが、自己嫌悪はそれだけで終わってはくれない。 誓いを忘れた自分がショックで思わず帰ってきてしまったが、霖之助への想いがいまだに消えてくれないのだ。 3週間の間、必死に自分をなだめようとした。 レミリアに誓った以上、自分は門番の仕事を全うしなければならない。一度忘れてしまったからこそ、今度こそは必ず。 そう言い聞かせているのに、そうしなければいけないと頭ではわかっているのに、心がそれを受け入れない。 押さえ込もうとすればするほど強くなる。霖之助のそばにいたい。霖之助と一緒に生きていきたい。 レミリアに仕える、その他には何もいらなかったはずなのに、少し満たされると欲を出すあさましい自分に歯噛みする。 門番としての自分を捨てることはできない。 誓いを立てたからというだけではなく、今でも紅魔館に、レミリアに使えることが至上の喜びであることに変わりはないから。 しかし、霖之助への想いも、いつの間にかそれに拮抗するほどに強くなってしまった。 誓いを忘れていた自分。 思い出してなお、門番として生きることも、霖之助と共に生きることも捨てられない自分。 こんなあやふやな気持ちではどちらに対しても失礼だとわかっているのに、割り切れない自分。 そんな自分が、情けなくて、悔しくて、腹立たしくて、憎くてたまらない。 そんな時、部屋の戸をノックする音が聞こえた。 「美鈴?……もう起きてる?」 「咲夜さん!?」 訪ねてきたのは尊敬する上司、咲夜。 「ああ、起きてたのね。そのままでいいから聞いて頂戴」 「……はい」 何を言われるのか怖くてたまらない。 しかしそんなことは言えず、次の言葉を待つ。 「最近どうにも塞ぎこんでいるみたいだけど、……霖之助さんとなにかあったの?」 ぞわ、と全身が粟立つような感覚。 返事がないことを肯定と受け取り、咲夜は話を進める。 「……何があったかは聞かないわ。 ただ、最近のあなたがどうにも塞ぎこんでいるようだから心配だったの。 だから、気持ちが落ち着くまで門番の仕事は休んで良いわ。お嬢様もそうおっしゃっていたから」 返事はない。 「いい、美鈴? もし自分ではどうにもならないなら、私に相談して。 何もできないかもしれないけど、人に話すことで気持ちを整理できることもあるわ。 その位のことは、させて頂戴」 「わかり……ました……」 絞り出すような声だったが、確かに返事を受け取った。 今はこのくらいにしておこう。本当に辛いなら頼ってくれる。それくらい自惚れたっていいはずだ。 そうして、咲夜は仕事に戻っていった。 ベッドに腰掛けている美鈴。顔は俯き、肩が小さく震えている。 一文字にぎゅっ、と結ばれた唇。目からは大粒の涙が溢れ、膝の上で握り締めた手にポタポタと落ちていく。 自分は一体何をやっているのか。 大切な誓いを忘れて男にうつつを抜かし、挙句の果てに咲夜やレミリアにまで心配をかけた。 少し休んでいい。それはつまり今の自分では門番は勤まらないということだ。 勝手に忘れて、勝手に思い出して、勝手に悩んで。 その結果がこれか。 何が、誓いを守る、だ。 何が、霖之助と生きていきたい、だ。 自分の気持ちすら決められなくて、大切な人たちに迷惑をかけたくせに。 こんな自分は、紅魔館にも、香霖堂にも、いてはいけない。 眩しいくらいに輝いているあの人たちに、こんな自分は近寄ることすら許されない。 その夜、返事がないことを訝しんだ咲夜が美鈴の部屋に入ると、テーブルの上に一通の書置きだけが残されていた。 前の話へ 次の話へ
https://w.atwiki.jp/thvision/pages/1678.html
《森近 霖之助》 No.1031 Character <第十二弾> GRAZE(1)/NODE(2)/COST(1) 種族:人間/妖怪 (常時)(1)(S): 〔あなたの手札にあるコマンドカード1枚〕を破棄しても良い。破棄した場合、〔あなたのデッキ〕を全て見て、コマンドカード1枚を抜き出し、相手プレイヤーに見せてから手札に加えても良い。その後、デッキをシャッフルする。 攻撃力(3)/耐久力(2) 「君達は大きな勘違いをしている様だね」 Illustration:鶴亀 コメント 非常に軽くなって帰って来た香霖堂店主。 起動効果は所謂手札のコマンドカードを別のコマンドカードに入れ替えるという物。手札で腐っているマナの生成等を強引な取引等に交換できる。 また、この効果はコストが1掛かるものの、捨てるコマンドカードの対象に制限が無い。よって銀ナイフと組み合わせれば毎ターン好きなカードを手札に加える事が出来るのだ。このカードが低ノードなのを活かして序盤からマナの生成で加速するのも良し。強引な取引でさらに手札を増やしても良し。是非曲直庁の威令や陰謀論、緑眼のジェラシーなどを手札に溜め込んで相手の行動を次々妨害するのも良し。手札にまだ無い銀ナイフを加えても良し。状況に合ったコマンドカードを選んでいこう。 逆にこのカードを相手にする場合、放っておくとカウンターを大量に握られる等して手が付けられなくなる場合もあるので優先的に除去して行きたい所。 地味にグレイズ1の3/2と平均以上の戦闘力まで持っている。目ぼしいコマンドカードがデッキから無くなった場合でも十分戦列に並ぶ事が出来るだろう。人間/妖怪と、サポートを受けやすい種族であることも好材料といえる。 相手の強引な取引に干渉してハートフェルトファンシー、エンパシーなどにはラストリモート、ワンショットされそうなときに雲外蒼天などが後出しできるため、(自動β)を持つコマンドカードとの相性が良い。 関連 第十二弾 スターターデッキ風 森近 霖之助/1弾 森近 霖之助/7弾
https://w.atwiki.jp/churuyakofu/pages/197.html
前の話へ あらすじ 裁縫を通じて惹かれあうアリスと霖之助。 それに納得がいかない魔理沙。三角関係がこじれにこじれた。 一足先に霖之助が立ち直り、アリスと魔理沙が続いた。 「……」 最近ここまでひとつのことを考え続けたことがあっただろうか。 自分に好意を寄せる2人の少女、アリスと魔理沙。 魔理沙とは彼女が物心ついたときからの付き合いだ。 人前では常に明るく振舞い、陰で血のにじむような努力を続ける少女。 自惚れかも知れないが、彼女の支えになってきた自信はあるし、そのことを誇りに思う。 アリスとはつい最近一気に距離が縮まった。 皮肉屋で素直じゃないが、思いやりのある優しい少女。 ここ1ヶ月ほどの、彼女がいる生活はとても充実していた。 どちらかが選ばれ、どちらかは選ばれない。 残酷なようだが、2人とも幸せにするなんて言っても彼女たちは納得しないし、そんな都合の良いことは口が裂けてもいえない。 審判を下すのは自分だ。理屈ではなく、2人のうちどちらと生きていきたいのか、自らの感情を問う。 そして、その答えはすでに出ていた。 「入るわよ」 「じゃまするぜ」 件の2人が店に訪れる。 「用件はもうわかっているよな?」 「はっきり聞かせて頂戴。あなたの口からね」 「……ああ」 2人の顔を交互に見つめる。 もう一度だけ、目を閉じて心に浮かぶ少女の顔を確認する。 心臓はこれ以上ないほど早鐘を打ち、手のひらは汗がじっとりにじんでいる。 だが、逃げ出すわけにはいかない。 「……魔理沙」 2人の反応は異なる。 魔理沙はさらに顔を険しくし、アリスは唇をかみ締め、顔をそらす。 ああ、おそらく2人はわかっている。次に続く言葉を。 「すまない。僕は君を選ぶことはできなかった」 目を閉じ、息を吐く。 ―――ああ、やはりそうか――― 覚悟はしていた。予想もしていた。 なのに、面と向かって言われると想像以上に堪える。いっそ崩れ落ちてしまいたいくらいだ。 それでも、今度ばかりは取り乱すわけにはいかない。 「はあ~あ、やっぱりな」 「やはりわかっていたんだね」 「まあな。何歳からの付き合いだと思ってんだ? 香霖の考えなんてお見通しだぜ」 「……」 「なに辛気臭い顔してんだよ全く。あれだけ女っ気がなかった香霖がこんな良い女に言い寄られるなんて金輪際ないぜ。 それも2人同時にだ。もっと喜べよ」 「魔理沙……」 今度はアリス。 なんともいえない顔をしている彼女にも声をかける。 「お前も同じだよアリス。たった今想いが通じたんじゃないか。笑わないなんてそれこそ私に対して失礼だぜ」 自分自身よくこんなに口が回ると思う。 多分、ごまかしているだけなんだろうが。 「さて、そうと決まればこんなとこに用はないな。若い2人に任せて退散させてもらうぜ」 「……ああ」 「じゃあな香霖。これでアリス泣かしたら許さないぜ」 さあ、一刻も早く外へ出よう。取り繕うのはもう限界だ。 そして店には2人が残る。 しばらく沈黙が続き、それをアリスが破った。 「霖之助さん」 「なんだい?」 「これでよかったの? 本当に私でいいの?」 その表情からは喜びを見て取ることはできない。 魔理沙のことが気になっているのだろう。 「ああ。いつものように理屈でどうのこうのとは考えなかった。 僕が店にいて、その傍らにいて欲しいのが誰か。それを考えたとき、真っ先に浮かんだのが君だったんだ」 「……そう」 そうしてまた続く沈黙。 「ねえ」 「うん?」 「今日は帰ることにするわ。まだ気持ちの整理ができなくて。 あ、嬉しくないわけじゃないの。でも、まだ素直に喜べないから……」 「ああ。急ぐ必要はないさ」 そうして店を出ようとするアリスの背中に声をかける。 「そうだ、一つ伝えないといけないことがあった。 次に君が来たときには、是非とも渡したいものがあるんだ。 ……待っているよ」 香霖堂を飛び出した魔理沙は、とにかくスピードを上げて箒を飛ばしていた。 歯はきつく食いしばられ、目は前を見ていない。 山から一本だけ突き出た大木。それに向かって突っ込んでいくが、顔を伏せている魔理沙は気付かない。 あわや激突かと思われた瞬間、魔理沙は目の前に開かれたスキマに飛び込んでいった。 気がつけば、布団の中にいた。 見覚えのない部屋。一体ここはどこだろうと思った瞬間、声をかけられる。 「危ないわね全く。自殺なんかされたら霖之助さんが悲しむわよ」 「……お前か、紫」 「ええ、久しぶりね」 「……見てやがったのか」 「もちろん、一部始終をね」 「それで? 惨めな私をあざ笑いに連れてきたってのか?」 「命の恩人に失礼なことね。それに、私にはあなたを笑うことはできないわよ」 「……」 その言葉を聴いてなんとなく察する。 「で、その大量のつまみと酒はなんだ?」 「わかってるんでしょ? こういうときは呑んで呑んで呑みまくるものよ」 「……まあいいや。どうせ呑むつもりだったしな。ここか家かが違うだけだ」 「そうそう。じゃあ乾杯ね。」 それから数十分後。 「随分呑んだわねえ」 「なあ~にまだまだこれからよお~」 2人で次々瓶を開け、気付けばすでにかなりの量を飲んでいた。 そろそろ溜め込んだものを吐き出させようと、紫は魔理沙の本心を尋ねる。 「で、どうなの? まさかすっぱり諦めきれたわけじゃないんでしょ? 言いたいことがあるなら吐き出してしまいなさいな」 少し目を左右にやる魔理沙。酔いはやや醒めたらしく、迷いつつもぽつぽつと話し始めた。 「最初はさ……あいつらが憎くて仕方なかったんだ。 私のいない間にこそこそしやがって……って。 でも段々、自分に対する後悔のほうが大きくなってくのがわかったんだ。 何でもっと積極的に行かなかったんだろう。 貰い手がなかったら頼むなんて軽口でごまかして、そんなんで香霖が気付いてくれるわけないって知ってたのに。 まだ私は大人になってないから、もっと大人にならないと香霖とは釣り合わないからって、 本気になるときを『今』から『いつか』にすり替えてた。 そんなことをしているうちに、『今』本気になってるアリスが香霖を動かし始めたんだ。 気がついた時にはもう手遅れで、香霖はすっかり私の方を向いてなかった」 その言葉に思うところはあったが、今はとにかく聞き手に徹する。 「なんで『いつか』なんて考えてたのかなあ。チャンスなんかいくらでもあったはずなのに。 やりたいこともいっぱいあったんだぜ。 唐突に『愛してるぜ』とか言って香霖を赤面させたり、 新しい料理を覚えて『おいしいよ』って言わせたり。 祭に2人で手をつないで出かけたり、 花見や月見でのんびり酒を酌み交わしたりもしたかった。 同じ布団で寝て、香霖の腕を枕にして。寒いからぴったりくっついて『これで寒くないぜ』ってささやいたり。 つい何ヶ月か前まで、手を伸ばせば届いたかも知れなかったのに、今じゃもう届かないんだ。 どんなに泣き喚いても、力づくで奪い取っても、それは私が欲しかった香霖じゃない。 ……私を一番愛してくれる香霖じゃないんだ……」 そこまで言うと、魔理沙は肩を震わせて俯いてしまった。 自分もこの子と同じだ。 その気持ちは手に取るようによくわかる。 だから、魔理沙の頭を優しく胸に抱いた。 「泣いたっていいのよ。あなたはまだ若いんだから。 こういうときは、泣いて泣いて全部吐き出しなさい。 そうして成長していけばいいの」 そう言いながら魔理沙の頭を撫でる。 「うっ……ぐっ……うわああああああああああああああ!」 いちど決壊してしまえば、もうあとは吐き出すだけ。 爪のあとが残るほど強く紫を抱きしめ、魔理沙はいつまでも泣きじゃくっていた。 2日が経過した。 しかし、まだアリスはやってこない。 (もう少し時間がかかるのかもな……) そんなことを考えつつ、霖之助は先ほど届いた文文。新聞の号外を開く。 その目に飛び込んできたのはこんな記事だった。 『熱愛発覚! 香霖堂店主森近霖之助と、七色の人形遣いアリス=マーガトロイド!』 同じころ、アリスもその記事を目にしていた。 つい先ほど、この新聞を作った本人、射命丸文が直接渡しに来たのだ。 「この号外はあなたが見なくちゃダメなんです! 今回情報をくれた人から頼まれたんですから!」 何が言いたいのか良くわからなかったが、どの道今は何も手につかない。 まあ気を紛らわすくらいのことはできるだろう。 そう思って新聞を開いた瞬間、アリスの頭は一気に覚醒した。 新聞の内容を要約するとこうだ。 『いつものようにネタを探していたところ、急遽取材の申し込みがあった。 渡りに船とその人物にあえば、なにやら人知れず咲いた恋があったとのこと。 しかもそれが有名な魔法の森に住む2人、森近霖之助とアリス=マーガトロイドと聞けば、 これは記事にせざるを得ないと判断した』 その後は2人の馴れ初めについて記されている。 情報提供者の名前を見ると、こう書いてあった。 『霧雨 魔理沙』 「……ここまでお見通しってわけね」 どこまでも世話焼きなやつだ。 自分が失恋した直後だというのに、アリスが魔理沙のことを気にして動けなくなることまで考えていたのか。 ここまでされては、自分も腐っているわけにはいかない。 人の恋路を勝手にばらすのは不届き千万だが、背中を押されたのも事実だ。 この記事を見た読者が押し寄せる前に、霖之助の下へ。 バタン! 勢いよく戸が開く音を聞きつけて目をやると、ここ2日待ち焦がれた少女の姿があった。 「……見た?」 何を、とは聞かない。 「ああ。全くあの子らしいな」 「そうね。私もようやく覚悟が決まったわ」 2人で笑いあう。どちらかといえば苦笑に近い笑みだったが。 「それでは僕の思いを伝える前に、この前話したものを渡そう」 そう言って奥に引っ込む霖之助。 戻ってきた霖之助の手に乗せられていたのは紙の包み。 「開けてごらん」 言われるがままに包みを開く。 出てきたのは、非常に細かな刺繍が施され、生地も糸も高級な品を使用した『振袖』であった。 「これを……私に?」 「ああ。……それは僕の、母の形見なんだよ」 「え?」 目を丸くするアリスを眺めつつ、話を続ける。 「僕が人間と妖怪のハーフということは知っているだろう? 人間だったのは母のほうでね。それなりの良家の一人娘だったらしい。 父は母が僕を身ごもったあと、親族たちに追われ、今は行方知れずだ。 母は妖怪の子を宿したために家を勘当されたそうなんだが、そのとき母親、 つまり僕の祖母からこの振袖を渡されたそうだ。 祖母も曾祖母から譲り受けたもので、母が嫁に行くときに着せたかったそうだが、 今話したような事情でそれも適わなくなってしまった。 だからせめて、まだ見ぬ孫が女なら孫に、男ならその伴侶となる女性に受け継いで欲しい、とね。 この話を聞いたのは母が他界する直前だった。もう何十年も前の話さ」 「……そんな大事な物を私がもらうわけには「アリス」」 軟らかくアリスの発言をさえぎる霖之助。 「僕と君が、初めて和服について語った時の内容は、まだ覚えているかい?」 当然忘れてなどいない。 確か、和服は着る人間が代わっても大丈夫なように厳密な採寸をしない。 そしてその理由は 「……あ」 大事な着物を、子へ、孫へ。 何年も何年も大事にしてきた着物だからこそ、それを授けることによって、 相手に愛情の深さを伝えるのだ。 「……」 言葉もないアリスに、霖之助が声をかける。 「その着物以上に大切なものは、僕の店にもない。値打ちの問題ではなく、ね。 これが僕の答えだ。 ……受け取ってくれるかい?」 ともすればあふれそうになる涙を必死に抑える。 今は泣くときじゃない。笑うときだ。 そうしてアリスは霖之助に応える。 「はいっ!」 その顔は、見るもの全てを魅了する最高の笑顔だった。 魔法の森の入り口に存在する店、香霖堂。 そこを訪れた客に、店の名物は何かと問えば、皆が口をそろえてこう言った。 それは、いつ見ても仲睦まじい銀髪と金髪の夫婦である、と 了 前の話へ おまけ
https://w.atwiki.jp/churuyakofu/pages/295.html
これは 未知との遭遇(3)第四種接近遭遇 の続きとして書かれたものです。 変人さんはそこらに落ちてるので探してお読み下さい。正常な方は今すぐ閉じて下さい。どちらでもでもない方は慧音と霖之助がちょっと仲良くなった状態と考えてお読み下さい。 接近遭遇の順序がおかしいのは仕様です。 第二種接近遭遇 森に程近く、しかし里からも大して遠くない、さりとてそのどちらでもない場所にそれはひっそりと建ってい る。建物自体に不審な点はない、ただ周りに置かれた様々な物が場所もあいまって異様な雰囲気を醸し出してい た。 戸を開けると眼前にはさらなる混沌が広がる。商品が山と盛られている道具屋を他に見たことがあれば別だが、 そんな可能性を考慮する必要はないだろう。見覚えのある日用品から一見しただけでは何に使うものなのかわか らないものまで品揃えは枚挙に暇がない。いい言葉で言えば、でだが。 人によってはゴミの山にも見える商品の群れの中にひとりの人間がいた。この店の主であり道具と本を偏愛す る男、森近霖之助。この山から客の望む品を探し出せるということは恐ろしいことにほぼ全ての商品の所在を把 握しているらしい。彼はひとりでいる時間のほとんどを読書に費やしている。よって来店した者の多くは店主が 本から顔を上げながら発する、気のない出迎えを受けることになる。商売をしている自覚があるのかすらを疑問 に感じても決して罰は当たるまい、実際生きる術としてこの店を営業しているわけではないし、企業努力など微 塵も感じられないのだから。 そんな体たらくなので当然客の数は多くない。場所選びが裏目となり人間にも人間以外にも寄り付かれず、独 特な接客態度が仇となり再び彼のもとを訪ねる気になる者も少ない。自然と来店するのは限られた面子になる。 たとえば彼が昔修行した恩のある道具屋の娘、たとえば魔法使いの友人、たとえば外の道具を監視する妖怪、た とえば主に忠実な従者、たとえば――。 森に背を預ける少し不思議な店、香霖堂。ここは全てを受け入れる。 その店に向かう人影があった、感覚の鋭い生物ならそれが妖怪でも人間でもない半端者であることに気づくだ ろう。手ぶらで、洋服を身にまとい、自らの足で、誰の命でもなくそれは歩く。その目が見据えるは人か妖か、 あるいは道具か、歴史か。 ほどなく目的地に着いた。 おそらく店主はいつもの仏頂面で本から顔を上げることだろう。そしていらっしゃいませ、とその気もないの に歓迎の意だけは示すのだ。しかし最近は客がいることも増えてきた、巫女や霧雨の娘さんがいる可能性も高い。 あのふたりに避けられているのはどうにかして改善できないだろうか。 戸を開けると何よりもまず香霖堂独特の埃っぽい臭いが鼻につく。鼻が利くのは多いに結構だがこういうとき まで必要以上に鋭敏なのは考えものかもしれない、半獣になって久しいが慣れないものは慣れない。 「やあ、君も暇だね。買い物ではないんだろう?」 口調から他に客はいないことがわかる、そういう線引は割としっかりとするタイプだと記憶している。視線を やるとまさに本にしおりを挿んでいるところだった。 「私のことならお気になさらずに。最近ここの空気が気に入っただけですから」 嘘はつかない。この臭いも、この店の道具が持つ歴史の片鱗を覗いていると思えば悪くない匂いになるという ものだ。 「人と話をしようというのに本を読み続けるのは失礼だろう? 君にその気がなくともこちらにはあるんだ。い つもはこちらが付き合っているのだからたまには僕の話に付き合うのが筋というものだ」 慧音の顔が一瞬にして強張る。霖之助を知っている者ならばわからなくもない反応だが、彼を受け流す技術に 乏しい彼女にとっては割と死活問題だ。幻想郷の記憶のお墨付きの長話なんて聞けたものではない。 「そう露骨に嫌そうな顔をしないでいいよ。話をすると言っただろう? 僕の独演でも構わないんだがひとりで 話はできないな。なに、返答いかんではすぐに終えるさ」 霖之助には考えるところがあった。慧音は半妖にしては気まじめな性格だ、悪く言えば人間並に余裕がない、 と彼は認識している、していた。だがもしかしたらちょっとしたことからそれを改める必要があるかもしれない と考えていた。 「僕らのような人間が混じっている者たちにも不文律があるのはわかっているね。君は用もないのに無遠慮に入 り込んで来すぎじゃないかい? 僕の領域に」 「ふむ……もう半身同士が会う分には支障などありはしない、あたりでいかがでしょうか? それにしてもたっ たの一年も経っていないというのにずいぶんと懐かしいですね」 慧音は至って涼しい顔だ。以前に同じような質問を受けたときの反応を知るものがいればどう思うだろうか。 それを知る霖之助は仏頂面を保ったままだった。脳裏にどのような思考が駆け巡っているのか、読み取るのは やや難しい。彼はああ、そうかとだけ呟いたきり黙り込んでしまった。 閑古鳥さえ鳴くのを躊躇ってしまいそうな沈黙が広がる店内、霖之助をみて慧音も口をつぐんでしまった。不 気味に空気は張り詰めているが不思議とふたりの表情は穏やかだ。 この程度のことでたじろぐほど慧音は未熟ではない、霖之助はこうとも認識している。 ただ、ひとつ大事なことを決めてしまうと途端に視野狭窄に駆られ熱くなる、それだけだ。十分未熟と言える が好意的に解釈すれば物事の優先順位が定められており、それは決して揺らぐことがないとも言える。彼女らし いと言えば彼女らしい。 慧音としては何故霖之助が黙っているのかわからなかった。 もちろん原因は推察できる、私の答えが癇に障ったのだろう。しかし彼の判断基準は理解しがたい点が多々あ り、なにが気に食わなかったのかわからない。そもそもつまらない堅物と言いながら私が傍にいることを拒否す る素振りをほとんど見せないのが解せない、もしかしたらこれが二度目か。そんな店主の態度に甘えっぱなしな のは確かに良くないことなのかもしれない。 互いの思惑をよそにふたりは表面上は何事もないように振る舞う。当たり障りのない会話を交わしながら慧音 は霖之助の腹の内を探るが、それで読ませるほど甘くない。次第に口数は減り、やがて人影がひとつ香霖堂を後 にした。珍しいことにまだまだ日は高い。 照りつける日の本を歩く眩しいそれを、暗い店内から見送るものがあった。 「君は元が人間だからかもしれないが、変わることに抵抗がないんだね。変わらないことを選択する僕が見つめ るのは少し厳しいよ」 当然慧音には届かない。 それ以来慧音は香霖堂に姿を見せていなかった。とは言ってもたったの半月ほどのことなので珍しいことでは ないはずだ。それでも霖之助には落ち着きがなかった、当然前回の別れ際のことである。 特定の事案を除けば彼の観察眼はなかなかのものである。残念な思考回路が働かなければ彼の能力はもう少し 有効活用されていたかもしれないと思うともったいない。 その眼には慧音が小さく映った。霖之助が少なからずショックを受けていたのを見て、あるいは何か考える所 があったのかもしれない。 問題はないと踏んでいたが見誤ったか、彼女は僕の理解から外れた妙な発想をままする。何しろあの堅物の彼 女ことだ、初めてこの店を訪れたときの理由を鑑みればどのようなとんまな論理が展開されているかわかったも のではない。これは次回来たときにでも少し気を使ってやる必要があるかもしれない。まったく、世話が焼ける 半獣だ。 彼は自分の中でそう結論付けるとしおりの挟まれた比較的薄い本を取った。これが霖之助にとっては娯楽の時 間だ、これが用も無く邪魔されることを彼は好まない。いつものように茶をすすりながら書を眺め、ある程度経 つ毎に頁を捲り、捲り――捲らない。視線は動くのだが焦点が合っておらず、文字列の上を目が滑る。頻繁に辺 りを見渡しては席を立つ。そして珍しいことに店内の掃除を始めた、はたきから始めて棚の濡れ拭き、床の箒掛 けの後に床にも雑巾を掛ける。道具の手入れを省いたというのに全てが終わるころには日は天頂に差し掛かろう としていた。 その間も客は誰ひとり訪れなかった。一時増えた人間の客も何故かわからないが、満月の日の潮が引くかの如 く気がつくといなくなっていた。霖之助は魔理沙も霊夢も来て欲しいときに来なくて、別に来ないでもいい時に 限って現れるのは何か法則があるのかを真剣に考え始めた。 答えなど元からないのでしばししても進むのは急須の中身の減りばかりだ。それに気づくと茶を淹れんとお勝 手に立つ。再び店に出てきたときに彼の手にあったのは珈琲だった。 進まぬ思索と同じく進まぬ読書の合間に珈琲をすする。たとえどんなに暑くとも彼が飲むのはホットだ、あの ときと同じく。 「恋のように甘くなければならない、か。ずいぶんとわかりづらい甘ったるさなんだな」 もしかしたら呟いた本人すら気づいていないかもしれないひとり言。いつだかの物忘れが気になって調べなお した、外の世界のさらにもう少し外の世界の言葉をまとめた書物にあったものの最後の下りだ。これを忘れてい たとは彼らしいと言えば彼らしい。 文字列を追う目が捉えるのは開かぬ扉ばかりで、娘のような少女とその友人について考えている脳裏には別の 少女――女性の後ろ姿が浮かぶ。 頭を振る。 「僕はなにか負い目でも感じているのか」 自らの手のひらを見つめる。今までこんなことは一度もなかった、誰かが来てペースを乱されることはあれど 居もしない人物によって惑わされるなどという奇妙なことがあるわけがない。そうしてこれまでの永い人生を過 ごして来たし、これからの永い人生も過ごして行く。 それなのにあの姿がちらちらとよぎる、これは一体どういうわけだ。単なる気がかりというには強すぎるし負 い目など彼女にはないはずだ、少なくとも一見のつまらぬ客よりは丁寧な対応をしている。僕の反応から変な気 を回してショックを受けていたとしてもそれは彼女が勝手に判断したものだ、僕の責任ではない。僕の責任でな いなら負い目を感じる必要もない。 ではこの異常は何なのだろうか。誰かが僕に魔法でもかけたのか……。そうか魔法だ、魔法といえば魔法使い だが呪いを使用する妖怪妖獣は比較的メジャーだ。なにせ彼女は森羅万象に通じると言われる聖獣と混じったの だから、その性質を考えれば呪い(のろい)を使うとは考えにくいが呪い(まじない)の方法のひとつも知っていて も何ら不思議ではない。 何が目的だか知らないがこんな迷惑な真似は即刻やめてもらわねばならない。そうでないと読書も満足にでき やしない、次回来たときなどと悠長なことを言わずにすぐにでもこちらから乗り込んでやろう。幸いにして今日 も客はいない、思い立ったが吉日だ。 霖之助はいそいそと出支度を始めた。まったくもって妙な発想からとんまな論理を展開している。しかし全て が全てずれた考えというわけでもない。 正しく彼女は彼に呪いをかけた、それがのろいなのかまじないなのかはわからない。そもそもこのふたつには 腐敗と醗酵程度の差しかないのだから。 人里には不思議な施設がある。半妖が人間を集め、呪文のようなものを唱えている。その呪文はどうやら眠り に誘う類らしく数名が舟をこいでいる。普段ならそのようなことをすれば半妖による拳骨なり頭突きなりによる 目覚ましが施されるのだが、今のところその様子はない。 呪文を唱える半妖、正確に言えば半獣の慧音には気がかりがあるようだった。髪と同じく青白い顔には陰が差 し、すらりと伸びた女性にしては高い身長を支えるのがやっとという具合だ。本人は隠そうとしているのだが、 生徒たちは顔を合わせる機会が多いのでとっくに気づいている。気づいた上で知らん振りをしている。 その頭には霖之助のさびしそうな顔が残っている。いつもの仏頂面に変わりはなかったが、彼女はそこに幽か な憂いを見た。 たとえ相手が神様だろうが閻魔様だろうが余裕たっぷりに煙に巻いてしまいそうな店主だ。私ごときの言であ のような顔を引き出してしまうとは夢にも思わなかった。今まで私が出向いたときの態度を鑑みれば平時であれ ばどのような思考が繰り広げられていたとしてもああはなるまい。こちらからなんとかするのが筋だが、嫌がら れているのなら香霖堂には行きづらい。どうにかしなければ……。 彼女は頭では全然関係のないことを考えながらも口では眠りの呪いを唱え続ける。これが慧音の仕事なので当 然だ。いや、報酬を要求していないので趣味かもしれない、要求しなくても好意で集まるので同じことだが。そ の仕事にも明らかに身が入っていない。挨拶回りをしたときに人妖問わず誰からも気まじめと評された慧音から は想像もできないことだ。彼女はそんな状態でも懸命に授業を進める。最早机に顔をつけて熟睡している男児に も気付けぬほど調子が良くない体を支え、脳裏に浮かぶ影を振り払いながら。 授業は「妖怪の脅威と共存の道」という単元に差し掛かっていた。彼女が寺子屋を開いた一番の理由なのだか ら当然教えることは多い。九代目御阿礼の子、阿求に一番細かく裏付けを取ったのもここだ。慧音にもわからな いことは当然あるし、白沢が創った歴史と幻想郷の記憶に違いがないとも限らない、というより違いがないわけ がない。 実際慧音は永夜異変の際に人里の歴史を食うことによって不気味な夜から人間を守ろうとした。消したものを 修復したからと言って消した事実までもが無くなるわけではない。あの晩、一部を除いた里外の者から見れば確 実に人間の里など存在しなかったのだ。同じような例が他にないとは言いきれない。 「と、ここまで言ってきたように人間と妖怪が共存できる道は多い。しかしながら妖怪が人間を襲うものである ことに変わりはない。今では命に危険が迫ることも少なくなったが昔は違う、たとえば――」 ほぼ無意識の内にも授業は進んでいる。たとえ体調が悪かろうが責務を果たさずにいられないというのは彼女 らしいと言えば彼女らしい。 昔に起きた悲しい出来事といえば半人半妖や半人半獣のことが比較的身近なことだろうか。私のように後から 混ざった者はまだ幸せな方だ。 子供たちに教えられるようなことではないが、先天性かつ人間がベースの場合、大半は望まれぬ形で生まれて いる。あの店主がどうなのかは知らないが、その可能性も高い。知能の低い妖怪が人里から人を攫った場合、男 は食って女は……というのは珍しい話ではなかった。ほとんどの場合はそのまますぐに食われて終わるかしばら く経って何事もなく食われて終わるかだが、例外はあった。 「霖之助……」 彼の知性を考えると親の知能が低いとは考えにくい、だが親で子の全てが決まるわけではない。そもそも彼が 自分の出生を知っているとも限らない。 そうか、私は不用心にも彼のそのような繊細なところを刺激してしまったのだ。 もう半身同士、これはもちろん人間同士という趣旨で言ったことだし彼もわかっているだろう。だがその言葉 を裏返せば人間と妖怪が混ざった存在であると強く言っているようなものではないか。不遇な生まれの場合はも ちろん、望まれた形であっても周囲からは半妖と避けられ続けてきただろう。その体験は人格形成に悪影響をき たすには十分すぎる。彼のひねた性格もひとりでする読書を好むのもそこに由来しているに違いない。 これはもう香霖堂に行きづらいなどと甘ったれたことを言ってはいられない。今日の授業が終わり次第直ちに 謝りに行かねばならない、そしてどのようなことをしてでも無礼の償いをするのだ。何故か教科書が読みづらい が授業を早く終わらせねば。 慧音は授業の続きを始めた。霖之助の仏頂面から感情を読みとるあたり彼女の観察眼はなかなかのものである。 だが残念な思考回路が働かなければもっとよかったことに違いない。 生徒たちからすれば何が起きたか全くわからない。妖怪の脅威について例を挙げ始めたと思えば急に黙り込み、 最近噂になっている男性の下の名前を呟いたと思いきや突如泣きながら授業を再開したのだ。 教室にいる女性生徒らほぼ全員からの黄色い声と一部の男性生徒からの悲鳴とを引き出すには十分だ。 ついでに言うと、慧音が霖之助の下の名前を呼ぶのは初めてだった。 生徒らを一喝して黙らせ、慧音は授業をいつもより少しばかり早く終わらせた。誰よりも早く帰り仕度を済ま せ、忘れないようにしっかりと言っておく。 「先生、休み明けだけどもう一度休むかもしれない。もしそうなったら長めになる」 「せんせー、もしかして香霖堂のお店の人絡みですかー?」 質問したのはいつぞやの香霖堂で慧音と霖之助に声をかけた女生徒だ。肯定するとさらなるやかましさが慧音 を襲った。 「ついに――!」「あの鉄壁が――!」「う、嘘だああああああ!」 収拾などつきそうもない。断片的にしか聞き取れないので慧音には何がなんだかわからない。もしこれでわか るようならこんな事態にはならなかっただろう。 どうしようもない騒ぎを鎮静化させたのはある生徒の指先だった。その指に気づいた者がひとり黙り、ふたり 黙り、やがて誰しもが口を閉ざした。慧音の眼もそれが指す先にある窓に釘付けになる。それはどうやら未だに 自分の存在が気付かれていることを知らないらしい。 白と呼ぶには少しばかり光沢がありすぎる色の髪、つむじの関係か一部が立ち上がっている。その頭が窓枠の 下から三割ほど、文字通り頭を覗かせていた。このような目立つ物を持つ者などたとえ白沢の記憶を総動員して も里内に思い当たらないに違いない。そう、里内には。 緊張、自責、不安。直前まで慧音が考えていたことを思えばこういった感情が湧いてくるのが当然だ。しかし、 彼女の胸を締め付けたものは一部異なるようだ。 それは彼が自分を避けているわけではないという安堵。 それは彼が照りつける日の下訪れてくれたという歓喜。 それは彼が何故に人ごみの中に現れたのかという不安。 それら全てがない交ぜになったものが心から溢れ、瞳のフィルターを通り、涙となってにじみ出る。彼女自身 は涙の理由を知らない。ただこれ以上無様な姿を見せまいという一心で心を落ち着かせようと努力する。 「そこにいるのはわかっていますよ? 店主さん」 目尻を拭って声を張る。その声からは動揺など微塵も感じられない。 うまく隠れていたつもりだった霖之助は飛び上がる。彼は慧音が寺子屋で授業中である可能性をすっかり失念 していた。おかげで茹だるような外気の中でしばらく待つ羽目になった、帰っても良かったはずなのだがどうせ あの様だ、窓の下に腰かけて待つことにした。 そして今に至る。 向けられた多数の好奇の目が鼻息荒く乗り込むつもりだった霖之助から勢いを削ぐ。この視線が彼の最も苦手 とするものである。皮肉なことに慧音の推論もまた、全て間違っていたわけではなかった。彼女の推論に足りな いものは霖之助の性格に対する理解だけだったので当然と言えば当然なのだが。結果として半妖は窓ガラス越し に半獣を控え目に見つめ、立ち尽くすこととなった。霖之助の目はかすかに光る目尻を捉える。 出会ったら最初に言おうと思っていたことが慧音の喉から出てこない。憚られるような理由もなくこのような 状態になるのは初めてに違いない。例え何があろうと自分の信じた道を突き進んできた彼女だ、間違えることは あれど行動を躊躇うことなどあるわけがない。年端も行かない少女に頭を下げたときも一切迷いはなかった。し かし今は言葉が出ない。結果として半獣は窓ガラス越しに半妖を控え目に見つめ、立ち尽くすこととなった。慧 音の目は頬を伝う汗を捉える。 「おや、用なく妖の住処を訪れるのは良くないと言ったのは誰だったかな……。心当たりはありませんか?」 沈黙を破ったのは心にもない言葉だった。口にした瞬間慧音に激しい後悔と自己嫌悪が襲いかかる。これでは まるで霖之助を拒否しているように取れる、というかそうとしか取れない。 「あ、いや、あれはそういうつもりじゃ……、すまない。またの機会させてもらうよ」 かぶりを振ってすぐさま振り返る。慧音が引きとめようとする前に霖之助は脱兎の如く駆け出していた、ガラ ス越しでその声が届くわけがない。それにしても霖之助が走るとは珍しい、常に泰然自若として生きている彼の 走る姿を見ることなどない。何か理由があったのだろうか。 残された方ががくりと首を垂れる。様子を伺っていた生徒たちがひと段落着いたのを察すると恐々としゃべり 出す、慧音の耳には一切入って行かないが。その中のいかにもやんちゃ坊主といった雰囲気を持つ少年が声を上 げた。 「せんせせんせせんせー! 今のって先生のコレ?」 ある指を立て、にやにやと笑う。 「コレ、とは?」 何が言いたいのかわかっていない。 「ちっがうよもう、先生のオトコかってことだよ」 「確かに森近さんは男性だがそれがどうした」 小首を傾げる。演技ではない。 「先生とイイ仲かってこと!」 「この前まではそこそこ悪くない仲だと思ってたんだがね……」 「ああもう! 彼氏とか恋人とかなのかってことだよ!」 「は?」 その少年の言葉を皮きりに一斉に生徒たちが群がる。中には今すぐ霖之助を追うべきと冷静な助言をする者も いたが多数の興味心と一部の思惑によって却下された。 慧音先生があんな顔するの初めて見ただの先生があんなこと言えるなんてびっくりですだの、今のは何かの間 違いですよねだの口々に質問が寄せられる。おかげで慧音は完全に出遅れてしまった、助言を聞くまで霖之助を 追うという発想が浮かばなかったのが主な原因だが。ともあれ、慧音が解放されるのはもう少し後になりそうだ。 霖之助は走るのをやめたのは寺子屋に使われている建物が見えなくなってからだった。なぜ走ったのか自分で もわかっていないに違いない、正誤はともかく彼には呪いを解かせるというれっきとした理由があったのだから 逃げる必要などないのだ。しかし何かを考える前に足が動いていた。これ以上ここにいたくない、聞きたくない、 見たくない、もしあのままでいたら自分の中の何かが壊れてしまうと霖之助の本能が警鐘を鳴らした。これ以上 深く考えるのはよくない、日を改めて他に人がいないときに尋ねようと切り替える。そこで誰かが霖之助に声を 掛けてきた。 全ての生徒を家に追い返し終えた頃にはもう日が暮れようとしていた。根掘り葉掘りの質問攻め、花見をした ときの会話などの個人的な会話以外は隠すこともあるまいと慧音が判断したせいでほぼ全てが白日の下に晒され てしまっていた。そこから主に女生徒たちによる妄想の発展ぶりときたら……慧音が全くわかっていなかったの が不幸中の幸いだろうか、彼女らと慧音とでは前提からして食い違っているのだから当然だ。しかし慧音にも理 解できた言葉がいくつかある。 眼前の青年のだらだらと長ったらしい主張を要約すると、自分は慧音が好きだ、お付き合いを申し込んだこと もあるが丁重に断られた、最近慧音にまとわりついているお前――僕のことだ――が鬱陶しい、今日の寺子屋で の態度は普通じゃない、どういう仲だ、ということらしい。 「客と店主だ、それ以上でも以下でもない。ついでに言うとまとわりついているのはどちらかと言うと彼女の方 だね」 「嘘を言うなあああああああ」 ついでに言ったことが悪かったらしい。気が触れているのかと疑ってしまうような奇声だ。これはこれで見が いのある。人が狂う瞬間などそうそう見られるものではない。 「そうか、君は彼女が好きなんだったな、すまない。正真正銘彼女が僕を訪ねて来ている。ついでに言うと客と 店主の間柄だよ」 彼はがっくりとうなだれてしまった。どうしてだろうか。 「……もういい。じゃあ半月前に慧音ちゃんがお前の店に言ったときに何か変なことを言ってないかだけ教えろ。 お前んちに行った次の日から六日も寺子屋を休んだんだぞ」 「なんだって? 体調不良が重なっただけじゃないのかい」 何か言われたのは僕の方だ、彼女じゃない。 「違う、休み明けに誰かのことで心労がたまって倒れたって言ってたからな。タイミングから考えてお前しかい ないんだ」 彼女はもしかしたら僕の思っている以上に変化しているのかもしれない。思いもよらない方向で。 「誓って僕からは大したことは言ってない。あとこれは善意だが想い人を付け回すような真似はお勧めしかねる。 ともかく客と店主の間柄でしかないのは確かだし、今の所発展する目途も立ってない。それより今日同じよう な質問をしてきたのは君で八人目だ。早く帰って他の七人を出し抜いて彼女を口説き落とす手立てを考えた方 が有意義だと思わないか?」 実際は七人目なのだがこれくらいの嘘なら閻魔様も見逃してくれるだろう。やはり慧音は男衆に好意を受けや すい見てくれと性格をしていたらしい。 恋に狂う人間というのは特にいなしやすい。七回目の八人目も前の六人同様慌てて帰って行ってくれた。演説 を七回も聞かされたせいで日が暮れようとしているではないか。八というのはひとり目が来たときに適当に決め たのだが、もうあとひとりと差し迫っている、八人目の恋する男がどんな顔をしているのか、少し興味がある。 違和感があった。 「恋……か。なんと俗っぽくつまらない言葉だ」 つまらないものに興味を持ってしまった自分に呆れてしまう、今まで気付かなかったが僕にはこんな一面もあ ったのか。しかしそれも彼女が僕に掛けた呪いの効果の一環に違いない、早急に解呪させなければいけない。い かな呪いのせいとはいえ、そもそも彼女に出会って何らかの影響を受けていなければこれほどの効果があるはず ない。格言で言うならばあれだ。 “男も女も、本当に嫌っていたらその相手の元になんか来ません” これは額面通り店主は私のことを避けているわけではない、と取っていいのだろうか。気が付いていなかった とはいえ、あれほど失礼なことを言ってしまったのに避けられていないと思ってしまっていいのだろうか? “あんだけ汗かいてたってことはわざわざ先生に会うために待ってたんだよ。そうじゃなきゃあんな色白な人が 外にいるわけないよ” 本当に私に会いに来たのだろうか。そうであるならば何故? 私に二度と近寄るなと釘を刺しに来たと考える のが自然だ。 “先生はそんなことを仰いますけど、お話を伺った限りではあちらの殿方が先生に好意を抱いているのはほぼ間 違いありませんよ? わたくしもあの香霖堂という店にお邪魔したことがありますが、あのような男に先生ほ どの方が心惹かれるとは思えませんが” 当然そんなはずはない、あの店主が女性に熱を上げるところなど想像すらできない。それにこちらとてあんな 陰険店主は願い下げだ。陰険で人が嫌がることも平気でして、今は負い目を感じて気になっているだけだ。 ただ、実際には違っていても“あの”店主が私を好いているように見えるというのはなかなか愉快な話ではあ る。 仮にそうだとしよう。私は半月ほど香霖堂に行っていない。その前までは十日も開けることは少なくなってい たから……一応説明がつく。わざわざ外で待っていたのは一刻も早く顔を合わせたかったから……というのは少 し無理があるか、相手は私だ。逃げたのは生徒たちの目が辛かったからで間違いないだろう。整理して紙に図面 を引いてみても一部無理があるが、一応全ての問題に解決案が出揃う。 しかしまあ、この紙に描かれているのは正しく絵空事、なのだが。 “そうですよぉ、見てくれが多少よくてもそんなの十年すればみんな同じです! 先生には素敵な旦那さんと幸 せになってもらいたいなぁ” 残念というかなんというか、彼は私と同じく十年ぽっちでは見た目など変わらない。それと何だろうか、生涯 独身でいる気だがたとえ誰かと結ばれたとしても、それが彼だと幸せになれないと思われているのだろうか。確 かに陰険で人が嫌がるようなことを平気どころかむしろ喜んでやることもあるが根気よくやっていれば修正する ことだって不可能ではないだろう。 “あ、いや、あれはそういうつもりじゃ……、すまない。またの機会させてもらうよ” 彼のことを考え続けていたせいだろうか、彼の声が浮かんできた。あのときの店主の挙動不審ぶりと言ったら 天狗のカメラにでも収めてほし―― 「あれはそういうつもりじゃ、ない?」 ではどういうつもりだった。私にこれ以上香霖堂に近寄るなという意味ではなかった! ということはやはり 避けられていたわけではなくて、ええと、落ち着こう。落ち着いて考えればわかるはずだ。 ふと眼前に置かれた絵空事が目に入る。 「まさか、な」 それにしてもいくら混乱していたとはいえあそこであのような言葉が口をついて出てしまうとは、一年前の私 では考えられない。私にもこんな一面があったのだな。正にあれだ、いいか悪いかは置いておいて。 「朱に交われば赤くなる、か」 赤く染まった頬は強い西日によるものであり、他の要素は一切ない、と誰かに聞かれたら答えるだろう。 森のはずれにはとある古道具店がある、名前は香霖堂。幻想郷は全てを受け入れる、とはとある妖怪の談だ。 なるほど、それを信じるのであれば香霖堂は幻想郷の縮図とも言える。 だけどまあその店の主はなんとも胡散臭い、これはつまり幻想郷の住人全てが胡散臭いとも言え、それが当た らずとも遠からずだ。さらに主が自分のこともろくにわかっていないとなると、その店が幻想郷の中心だとは断 定しにくいのではないだろうか。 おわ霖
https://w.atwiki.jp/th_izime/pages/206.html
ご覧になりたいスレをお選びください。 俺×キャラ 霖之助受け:1スレ目
https://w.atwiki.jp/yaruojla/pages/286.html
DETA二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二 モチーフ:特になし 分類:陰陽師/作り手/ 二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二DATA ,,.. -―- ..,,__ }'、 ,,. ''´ `´ヽ/__〉 / ',`ヽ / / / ヽ ヽ ∠、_ノ / / l } ', '、 {∠ノ / l /r=、lヽl/ } ヽ ヽノ/|ノ  ̄l /';弋r/ヽ'l /从/ | } { 从 l//`ヽ、 /l /-‐/ } l | ∧ ヽ,l / `''⌒/テヽ';/ l l ,. -、_ _,,..ゝ∧l ./ ヽ、 }ヽ、/l/ //'} /´ ヽ/`l''ーv' ´ /l/ l/ヽ、 `ヽ ´´ ,.ノ l/l/ 〈ヽ l ヘ l l〉〉 {\\ \_ ,,.. ィ´ | / } \ l ∧ l 〈 〈l l ヽ, ' ..,,_/\´ /l // // ヽ | ,/ } l 〉 ',、 ヽ`''ー// 〉ヽ、/ノ/´. /_ノ ヽ ´ | l l lヽ`' / 〈 / `ヽ,_ l l ゞ '; / ヽ \ ヽ / 〈 / //l l `ヽ //''‐-、-、 l, / ヽ ∨´ / /// l | l`'''- ..,/`ヽ、ヽ,/ノ __,,.ゝ-\ ', </ { v /, ヽ / / `'' ..,,`v、''´ ー- -- `ヽ、_,,..ノ ` ´l /ノ/、 / l , ' ー----‐'''´ ̄ ̄`''ヽ ''´`ヽ /' / / ヽ. / l _、_ / / ,l_ノ ̄,____ `'l'ヽ`ヽ、 `ヽ// / `l. / ,l ,..,_ヽ{ l_ノ_ソ,'´ l;.;.;.;.;.;.;.;. ̄`'ー-、., ヽミ 〉 / ,. -'´';// {/ `ヽ、} || ||_|;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.`ヽ、{`ヽ /ヽヽ/ヽl / \ \ || |/|| |ヽ;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.ヽ ''ヽ/___ ,/ / \{ ' ` \| ,'| l `ヽ__;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.} ,.. / / ヽ\ ヽ _ゝ-----、;.;.;.;.;.;.;`'''ー----t´ ヽ / / \ ヽ \/´ _ ヽ;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;l ,,.. - '´ ̄ ̄`''----、 `ヽ `、 ,,./ /´ ヽ;.;.;.;.;.;.;.;. ,,.. ┴´ / `' ,.. }-‐'´, \ /l' / ',ー-- / ヘ / ,,.. '''´ ,,. -‐''´,,. -‐'''´; ; / / | l ヽ },.. '´ ヽ /,,. ''´ ,,.. -'´ ,,. -‐'´ ; ; ;; ; ; ; ; ; / / l/ ヽ l , _,,. 〉 /,,,. -‐''´,,.. -‐'´ ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; l / | ゞ /|l // / ; ; / /,,... -‐''´ ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; / / l | / |//,/; ; ; ;; / /________ ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; { | |{/; ; ; ;//_ノ ,. ' __ `ヽ、 ; ; ; ; ; ; | l | |; ;/_ノ´ / / l ヽ、 ; ; ; ; / __| | l;/ / / / | ヽ ; ; ; . / /; ; ; ; ;| l ヽ/ { | l ; ; ; / /; ; ; ; ; ; ; ;| | ̄ ̄`''ー-- ..,,, | | ; ; 二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二DATA 香霖堂の店主を務める青年。 見た目の割に年寄りで、戦国時代から生きている。 キョン子とは其の当時、織田信長相手に一緒に戦った仲。 道具を愛し、道具を大切にする人間を好むが、逆に道具を大切にしない人間は嫌う。 見た目は寡黙そうだが、割りと喋るのが好きで、特に蘊蓄を好む。 また本を読むのが好きで、放っておくと食事も睡眠も忘れて一週間は本を読んだまま、という事も以前は有った。 が、今はどちらも行き過ぎると直ぐにキョン子に突っ込まれて止まるので、其処まで酷くはならないのが現状。 腕の良い式神使いであり、魔道具作成の達人。 腕前はヒヒイロカネ等の金属を加工したり、現在では殆ど作れる人が居ないような宝貝等のマジックアイテムを作ったり する事が出来る程度。 ただ、簡単なマジックアイテムや武器(但し霖之助基準の『簡単』)なら居候の食費や学費の為に他の店に卸したりして いるものの、一品物のアイテムは趣味や身内、気に行った相手以外の為に作りたがらないし商売っ気もない。 彼にとって道具の幸せとは持つべき人間が持ち、その手で振るう事にあり、それが達成される場合、只同然で売る事すら ある。 それと国に頼まれ四神機という決戦兵器を作った事もある。 ぶっちゃけると新城さん達の親父。 同居人であるキョン子には昔の関係で頭が上がらず、彼女の尻に敷かれている。 .
https://w.atwiki.jp/churuyakofu/pages/309.html
2011年10月19日~31日の期間で行われた 霖之助カップリング投票の結果です 順位 少女 得票数 得票率 1 お空 300 10% 2 魔理沙 299 10% 3 さとり 230 7% 4 霊夢 159 5% 5 慧音 154 5% 6 青娥 129 4% 7 紫 126 4% 8 咲夜 125 4% 9 アリス 124 4% 10 妖夢 114 4% 10 文 114 4% 12 パチュリー 97 3% 13 モブ河童 83 3% 14 ナズーリン 62 2% 15 布都 45 1% 15 幽香 45 1% 17 朱鷺子 42 1% 18 華扇 41 1% 19 白蓮 40 1% 20 阿求 33 1% 21 先代巫女 32 1% 21 早苗 32 1% 23 雛 31 1% 24 橙 30 1% 25 幽々子 25 1% 26 衣玖 24 1% 27 フランドール 23 1% 27 レミリア 23 1% 27 藍 23 1% 27 鈴仙 23 1% 31 俺 22 1% 32 パルスィ 21 1% 33 天子 20 1% 33 天魔 20 1% 33 妹紅 20 1% 36 お燐 19 1% 36 こいし 19 1% 36 はたて 19 1% 36 レティ 19 1% 36 依姫 19 1% 36 永琳 19 1% 36 美鈴 19 1% 43 にとり 18 1% 43 大妖精 18 1% 43 小悪魔 18 1% 43 小町 18 1% 43 映姫 18 1% 48 星 17 1% 49 椛 15 0% 50 マミゾウ 13 0% 51 クオン 11 0% 52 チルノ 7 0% 52 ルーミア 7 0% 52 萃香 7 0% 55 ぬえ 5 0% 55 豊姫 5 0% 57 三角関係 4 0% 57 神綺 4 0% 57 諏訪子 4 0% 57 輝夜 4 0% 57 魅魔 4 0% 62 ZUN 3 0% 62 勇儀 3 0% 62 神奈子 3 0% 65 俺天狗 2 0% 66 ポンデライオン 1 0% 66 ルナサ 1 0% 66 屠自古 1 0% 66 神子 1 0% 66 霖子 1 0% 投票総数 3077
https://w.atwiki.jp/thlabyroth2/pages/93.html
森近 霖之助 v1.203 / プラスweb体験版E´ ステータス 能力基礎値 HP 134 TP 16 攻撃 72 MP 9 防御 72 MP成長率 1/16 魔力 72 回避 4 精神 72 HP回復率 16 敏捷 72 MP回復値 2 属性耐性 状態異常耐性 炎属性 132 冷属性 132 猛毒 10 麻痺 20 風属性 80 然属性 80 鈍重 30 衝撃 40 魔属性 80 霊属性 80 恐怖 50 沈黙 60 冥属性 100 物属性 144 即死 70 低下 80 レベルアップ難度 56 加入条件 最初から スペル 名前 消費MP 対象 属性 攻撃種類 効果 使用後ゲージ量 備考 応急処置 1 味方単体 物 補助行動 本から得た基本的な応急処理の知識によりHPを微回復し、更に猛毒と恐怖を治療する。スキルレベル上昇に伴い治療可能な状態異常が増える。 7000 回復量は攻撃・魔力に依存SLv1で猛毒・恐怖 SLv2で鈍重 SLv3で沈黙Lv4以降はHP回復量のみ変化 戦闘指揮 2 味方単体 物 補助行動 本から得た基本的な作戦指揮のノウハウにより、対象の全能力を僅かに上昇させる。 6600 上昇量は(8+SLv*2)% スキルリスト 名前 上限Lv 必要SP 効果 補足 ハイブースト Lv5 3Pts MP 「啓蒙の書」でハイブーストを習得する。 6Pts TP, 攻撃, 防御, 魔力, 精神 向上心 Lv2 5Pts スキル取得者が取得する経験値が(SLv*6)%上昇する。スキル取得者が探索メンバー12人の中に加わっていない場合、効果を発揮しない。「実戦経験」と効果は重複しないが、その他の取得経験値上昇スキルとは重複する。 実戦経験 Lv2 5Pts スキル取得者が取得する経験値が(SLv*12)%上昇する。スキル取得者が戦闘終了時に前衛にいない場合、効果を発揮しない。「向上心」と効果は重複しないが、その他の取得経験値上昇スキルとは重複する。 幻想郷の古道具屋店主 Lv10 1Pts 戦闘終了後の敵ドロップ率が(SLv*4)%上昇する。戦闘終了時にスキル取得者が前衛にいない場合、効果量が減少する。 連戦ボーナスも含めると更に効率UP。前衛にいない場合効果量減少(1/4) 目聡い店主のサガ Lv10 1Pts 戦闘終了後の取得金額が(SLv*2)%上昇する。戦闘終了時にスキル取得者が前衛にいない場合、効果量が減少する。 連戦ボーナスも含めると更に効率UP。前衛にいない場合効果量減少(1/4) 隊列変更効率化 Lv2 5Pts スキル取得者が「隊列変更」コマンドで後衛の味方を前衛に配置した場合、その味方の行動値が 7500+SLv*800 に設定される。 SLv2で交代後の行動値が9100前衛での活躍が期待できる。 ヘンな生き物の知識 Lv2 5Pts スキル取得者が前衛にいる場合、敵他種に与えるダメージが上昇する。同スキル取得者が前衛に複数人存在する場合、スキル効果は重複しない。 行動時敵攻撃低下 Lv2 5Pts スキル取得者に行動順が回ってきた際、敵全員に(SLv*4)%の攻撃低下効果を付与する。 行動時敵魔力低下 Lv2 5Pts スキル取得者に行動順が回ってきた際、敵全員に(SLv*4)%の魔力低下効果を付与する。 備考 「目聡い店主のサガ」と「幻想郷の古道具店主」を取得させ後衛に控えさせて雑魚戦はもちろん、ボス戦のドロップ吟味もだいぶ楽になるお助けキャラとしての運用がメインに思われる。 戦力としては全くの役立たず……と思いきや壁としての役割はその限りではない。 「隊列変更効率化」や「行動時敵魔力低下」「行動時敵攻撃低下」で戦闘の補助をさせることもできる。 ステータス基礎値はHPが並程度、その他は全て低水準で序盤は頼りない。 しかし霖之助のブーストスキルは他のキャラより高性能。 これらのレベルを上げることで壁役、準壁役くらいの耐久力を得ることができる。 加えて啓蒙の書でHP・属性ハイブーストを解放すればさらなる耐久力強化も可能である。 ボス戦での運用は壁として居座り「隊列変更効率化」による隊列の入れ替えになるだろう。 全員の敏捷が同値の場合、行動値が6600未満の味方を 前衛→後衛→前衛 と移動させればその味方の行動を早めることが可能。 ただし行動値のロスを考慮すると閾値はもう少し低くなる。 動かす味方の行動値が低ければ低いほど恩恵が大きい。霖之助自身の敏捷を高めておけばさらにお得。 同時に撃ち逃げ役の味方を 後衛→前衛→後衛 と移動させれば一撃離脱させることもできる。(撃ち逃げの詳細はこちら) 「行動時○○低下」を取得させているならより有用に働くことは間違いない。 ステータス振りについて ステータスは攻撃に振ってもしょうがないので、敏捷に振って「隊列変更効率化」のスキルを活かすべきか。 もしくはHP2敏捷1程度のバランスで割り振り、上記にあるように準壁としての役割を果たすのがいいだろう。 スキル振りについて 壁として運用するか、後衛にひきこもらせておくかは自由だが、どちらにせよ「目聡い店主のサガ」と「幻想郷の古道具店主」のお助けスキルは必須だろう。 ボス戦で壁として運用するなら「隊列変更効率化」をまず取ろう。 後衛から呼び出したアタッカーや回復役の行動が早くなる。 特に回復役が早く動けるので、回復が間に合わずに主力が落ちる危険を減らせるのが大きい。 また、通常であればアタッカーは壁役より敏捷が高くないと一撃離脱がしづらいが、「隊列変更効率化」があればアタッカー側の敏捷を気にする必要がほぼなくなる。 このため鈍足アタッカーのボーナスも安心して攻撃や魔力に極振りできる上、自己能力上昇スペルで敏捷が下がる萃香や空も問題なくぶっぱアタッカーとして運用できる。 さらに霖之助に敏捷上昇を付与すれば、他の壁役ではありえない速度でアタッカーを取っ替え引っ替えする霖之助の姿を拝めるだろう。 スキルポイントが余ってきたら「行動時○○低下」や防御,精神のハイブースト、啓蒙の書を使ってHP,敏捷,状態,属性などのハイブーストを覚えさせると、壁役としてより安定した活躍が見込める。 もしも酔狂にも前作のような前衛で使える持久系アタッカーにしたいなら各種ハイブーストをとるといい。 かなりのスキルポイントが必要だが、サブクラスも合わせれば必ずや大器晩成してくれる……はずだ。 超高のスキルポイントが要求されるが全てのハイブーストを取得すると高水準のバランスキャラになる 『応急手当』だが、SLv1で猛毒,恐怖、SLv2で鈍重、SLv3で沈黙の回復できる。麻痺や能力低下は直せないようだ…残念。 サブクラスについて 壁役として運用する場合は軍師、薬草使い、付術師などの味方を援護できるクラスがいいだろう。 「隊列変更効率化」による隊列変更をメインに使うのであれば、前衛にいるだけで味方の戦闘力を向上できる軍師がよい。 薬草使いは『覚醒のハーブ』等の補助スペルを習得できる。 壁用のステ振りの場合、『応急手当』より「祈りの心」をつけた『戦闘指揮』の方が間違いなく回復量は高くなる。ただし元々の効果量が小さいため「付術強化」の恩恵はあまり感じられないだろう。 護衛士にして左端でメイン壁にする場合は、防御精神がそこまで高くないので回復役との連携は必須。 ドロップ率のために後衛に引きこもらせるだけなら、キャライメージとは合わないが歌姫にして探索支援させてもいい。 アタッカーにしたいなら、ボス戦なら貫通性能の高い「鉄山靠」がある体術士、雑魚戦なら「斬一閃」がある剛術士だろうか。 ■ プラス版 表示 森近 霖之助 スキルリスト 名前 上限Lv 必要SP 効果 補足 ハイブースト Lv5 3Pts MP 「啓蒙の書」でハイブーストを習得する。「百戦錬磨の書」適用で各種ギガブーストに変化 6Pts TP, 攻撃, 防御, 魔力, 精神 覚醒スペル 名前 消費MP 対象 属性 攻撃種類 効果 使用後ゲージ量 備考 的確な知見 8 味方全体 物 補助行動 味方前衛全体のHPを割合回復し、全ての状態異常,低下状態を50%の確率で治療する。HPの回復割合はかなり少なめ。 4000 SLv0では使用できない回復量は(10+SLV*2)%だと思われる 覚醒スキル 名前 上限Lv 必要SP 効果 補足 元・元アマノムラクモ所有者 Lv10 10Pts 本当にただ所有していただけである。スキル取得者の全ての攻撃行動に「全能力微低下」効果が追加され、スキル取得者の全ての回復行動に「全能力微上昇」効果が追加される。 上昇量は(SLv*1.5(小数点以下切り捨て))%低下量は(SLv)%と思われる ガッツ Lv2 5Pts キャラが戦闘不能になった場合、(SLv*25)%の確率でTPを10消費し、HP1で踏みとどまる。 妹紅の「リザレクション」と違い発動時行動ゲージが0にならずそのまま 備考 覚醒で追加スペルを獲得。残念ながら前作のようなアタッカーへの転向とはならなかった。 「ガッツ」で居座り能力が強化された他、全体割合回復+状態異常治療の『的確な知見』を手に入れ隊列変更、回復、能力上昇低下を一人でこなすことができるようになった。 ただし「元・元アマノムラクモ所有者」の全能力微低下効果量は小さく、隊列変更する必要がない暇な時に通常攻撃でパスする時に能力低下付与できる程度と思ったほうが良い。 『的確な知見』と組み合わせると全体のHPを回復しつつ、全能力上昇を最大15%付与できるのでちょっと便利。 MP消費量と行動後遅延的に連発できるような行動ではないが。 「ガッツ」で生存能力が上がったので、前衛がほぼ全滅状態になっても霖之助なら「隊列変更効率化」で後衛から呼んだキャラに即行動させられて便利。 全覚醒スキル取得に必要なスキルポイントは110。覚醒スペルも含めると235。 ステータス振りについて スキル振りについて サブクラスについて 付術師になると「元・元アマノムラクモ所有者」と『的確な知見』の能力上昇に「慈愛の心」が加わり、 前衛全員に15%の攻撃魔力敏捷上昇、35%の防御精神上昇が付与できるようになる。「付術強化」も取得すれば17.37%に。 他キャラの全体防御精神上昇スペルの真似ごとができるようになる。 各種ギガブーストを取得した頃には龍神の力が最適となる。上の中くらいの敏捷で隊列変更し、各バフ・デバフをばら蒔く姿は前作に劣らない活躍だ。また、攻魔どちらもそれなりの高水準なので「龍神の吐息」も使えないこともない。 残念ながら、全ての回復行動とあるが癒術師の「応急処置」では「元・元アマノムラクモ所有者」の効果は発揮されない。